商標登録・意匠登録・特許出願をオンラインで相談できるどんぐり特許商標事務所

column

知的財産コラム

弁理士

2026/6/15

【2025年振り返り】生成AIが変えた知財業界|弁理士が解説する実務の現実

2025年知財業界の一番のキーワードは「生成AI」

2025年の大晦日、この1年の知財業界を振り返ると、間違いなく「生成AIの本格普及」が最大のキーワードだったと感じています。
10年以上、この知財業界に身を置いてきましたが、これほど短期間で業界の議論の中心が変わった年は珍しいと思います。昨年までは「権利範囲の解釈の議論」など実体的な議論が中心でしたが、2025年は明らかに話題の転換が生じました。
生成AIが身近な存在になり、実際に使われる場面が増えたことで、「便利だよね」という段階を超えて、「これをどう扱うのか」という現実的な問題が次々に表面化した1年だったのです。

クリエイター vs AI事業者の構図が鮮明に

特に印象深かったのは、クリエイターや作り手側からAI事業者に対する紛争や問題提起が目立ってきたことです。
具体的には以下のような動きがありました。

  •  新聞社と生成AI事業者との争い:報道コンテンツの学習利用をめぐる対立

  •  声優業界と音声AIを巡る問題:声の権利・パブリシティ権の論点

  •  画像生成AIをめぐる議論:イラストレーター・写真家からの問題提起

私自身、お客様からのご相談でも、「AIに関する権利をどう考えればいいのか」という質問が格段に増えています。これは、AIが単なる話題から実際のビジネスツールに変わった証拠だと感じています。

国のAI政策も本格化 — AI新法の成立と施行

制度面でも大きな動きがありました。

  • 2025年3月:AI事業者ガイドライン公表

  • 2025年9月:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)施行

  • AI戦略本部の体制整備

これらの動きを見ていると、AIをどう管理しながら使っていくかという、より実務的なフェーズに社会全体が入ったことがわかります。
従来の知財業界は「コンテンツをどう守るか」という視点が強かったのですが、世の中全体の軸足は「コンテンツをAIでどう活用していくか」に移ってきているという空気感を強く感じています。

特許分野でもインパクトの大きな判決が

ドワンゴ vs FC2最高裁判決の衝撃

生成AI以外でも、2025年には重要な判決がありました。
3月のドワンゴ対FC2の最高裁判決では、国外のサーバーから国内向けにプログラムを配信するケースでも、日本の特許権の効力が及ぶという判断が示されました。
これまで、日本の特許権は日本国内の行為にしか及ばないという原則(属地主義)があります。そのため、本件では「特許システムの中核(サーバー)が海外にある場合、日本国内での特許侵害が成立するか」が最大の争点となりました。
グローバルなビジネスを展開する企業にとって、特許戦略を根本的に見直すきっかけとなる、かなりインパクトの大きい判決だったと思います。

美容整形分野の特許権効力判決

もう一つ注目されたのが、美容整形分野の判決です。
従来、人を手術・治療・診断する方法には特許が及ばないのがルールでしたが、美容外科の手術方法については特許権の効力が及ぶと判断されました。医療分野に携わる方々には驚きのある判決だったと思います。

AI関連特許の出願が着実に増加

出願件数全体では大きな増減はないものの、AI関連特許の出願は着実に増えています。
現在は初期に出願されたAI関連発明が公開され始めている段階で、これから先行技術として影響してくる時期に入ります。今後、審査が進んでAI関連発明の特許成立も徐々に増えてくるでしょうから、来年以降もこの分野から目が離せません。

知財業界を盛り上げる取り組みも

一方で、知財業界全体を盛り上げようという動きもありました。
大阪関西万博では特許庁がブースを出展し、弁理士会も協力して知財を身近に感じてもらう取り組みが行われました。こうした流れが来年以降も続いていくことを期待しています。

弁理士として感じる2025年の総括

弁理士として2025年を振り返ると、知財業界が「理論」から「実践」にシフトした年だったと感じています。
生成AIをはじめとする新しい技術に対して、「どう対応すべきか」という議論から、「実際にどう運用していくか」という段階に移りました。お客様からのご相談内容も、より具体的で実務的なものが増えています。
来年以降も、技術の進歩とそれに追いつこうとする法制度、そして現実のビジネスニーズの間で生まれる課題に、弁理士として向き合っていく必要があると感じています。

まとめ

2025年の知財業界は、生成AIの本格普及により「新しい時代の幕開け」を象徴する1年でした。従来の枠組みでは対応しきれない課題が次々と表面化し、業界全体が変化への対応を迫られています。
弁理士として、皆さんの知財に関する疑問や課題に寄り添いながら、この変化の時代を一緒に乗り越えていければと思います。知財に関するご相談がありましたら、お気軽にお声かけください。


この話題について詳しく知りたい方は、「2025年の知財業界を振り返る」もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 2025年の知財業界で最も大きな変化は何でしたか?

A. 生成AIの本格普及により、「便利だよね」という段階を超えて「これをどう扱うのか」という現実的な問題が表面化したことが最大の変化でした。議論の中心が入り口論から実務運用にシフトした1年でした。

Q. ドワンゴ対FC2の最高裁判決はなぜ重要なのですか?

A. 国外サーバーから国内向けサービス提供でも日本の特許権が及ぶと判断されたことで、「サーバーの所在地」より「提供先」を重視する新しい基準が示されました。グローバル企業の特許戦略に大きな影響を与える判決です。

Q. 美容医療の特許判決(東海医科vs医師Y)のポイントは?

A. 2025年3月19日の知財高裁大合議判決(令和5年(ネ)第10040号)で、美容目的の薬剤調合に特許権侵害が認められた初の判決です。「豊胸は治療ではない」「医師の調剤免責には当たらない」と判断され、約1,500万円の損害賠償が命じられました。美容医療分野が特許の射程内にあるという前提が確立され、美容クリニック・美容医療機器メーカーは知財に対して、より一層留意する必要があります。

Q. AI新法(AI推進法)が施行されたことで企業が対応すべきことは何ですか?

A. AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)は2025年5月成立・9月に全面施行されました。罰則は設けず、指導や事業者名の公表をベースとした仕組みが特徴です。AI事業者ガイドラインと併せて、自社のAI開発・利用が法的にどう位置づけられるかを整理する必要があります。海外事業者でも日本国内のユーザー向けに事業を行う場合は適用対象になる点に注意が必要です。具体的な対応については弁理士・弁護士へのご相談をおすすめします。

Q. 生成AIで作成したコンテンツに著作権はありますか?

A. 現行の著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されており、AIが自動生成したコンテンツに著作権が認められるかは個別判断になります。人間の創作的寄与の程度が判断の鍵です。具体的なケースについては、弁理士・弁護士にご相談ください。

【関連記事】

▶  ノウハウを守る最強の知財戦略とは?

▶  特許戦略の基本:いつ・何を守るべきか

▶  均等論とは?特許侵害判断の重要ポイント

▶  中小企業のための知財チェックリスト


この記事はYouTubeチャンネル「どんぐり5分知財ラジオ」の動画をもとに作成しています。

動画はこちら → https://www.youtube.com/watch?v=8s1_Q0krNRQ

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のケースについては専門家(弁理士)にご相談ください。