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2026/1/21

特許権や意匠権には有効期限があり、いつか権利は消滅してしまいます。しかし、製品の「形」そのものをブランドとして保護できる「立体商標」は、更新を続ける限り永続的に権利を維持できる最強の知財です。
2025年7月、発売から60年目にして、ついにポッキーの形状が立体商標として登録されました。これが意味するものとは何でしょうか?
本記事では、ポッキーの事例を通じて、立体商標の戦略的価値と、企業が長期的にブランドを守るために知っておくべき知財戦略を弁理士が解説します。
2025年7月25日、江崎グリコ株式会社のチョコレート菓子「Pocky(ポッキー)」の商品形状が、立体商標として正式に登録されました(登録第6951539号)。
これは何を意味するのでしょうか?
立体商標とは、商品そのものやパッケージの立体的な形状を「ブランドの目印」として保護する制度です。つまり、ポッキーの細長いスティック状のプレッツェルにチョコレートがかかった形状が、「それ自体がグリコのブランドである」と国に認められたということです。
実は、立体商標の登録は極めて困難です。
特許庁の審査では、単に「商品の形」と判断されると登録は認められません。登録が認められるには、以下のような条件が必要です。
強い識別力 : その形状を見ただけで、誰もが特定のブランドだと認識できること
使用による周知性 : 長年の使用により、市場で広く知られていること
機能的必然性がない : その形状が、単に機能上必要なものではないこと
ポッキーは、1966年の発売から約60年という長い歴史の中で、その形状が消費者の心に深く刻まれ、「この形=ポッキー=グリコ」という強固なブランド認識を獲得してきました。
この登録により、グリコは以下の強力な権利を獲得しました。
類似品の排除 : 類似した形状の商品を日本国内で製造販売することを阻止できる
ブランド保護 : ポッキーの形状そのものを半永久的に保護できる
競争優位性の確立 : 他社が同様の形状を使えないため、市場での独占的地位を維持
製品の形状を保護する権利には、立体商標のほかに意匠権があります。一見すると同じように思えますが、ブランド戦略上のパワーには大きな違いがあります。
項目 | 立体商標 | 意匠権 |
|---|---|---|
保護対象 | ブランドとしての立体的形状(目印・識別機能) | デザインとしての形状(美的創作) |
保護期間 | 10年ごとに更新可能(永続的) | 出願日から最長25年(延長不可) |
出願期限 | なし(識別力が備われば可能) | 商品公開(販売)後1年以内 |
登録要件 | 識別力(または使用による識別力) | 新規性・創作非容易性 |
最も重要な違いは、権利の存続期間です。
意匠権は、どれほど優れたデザインでも出願日から25年で権利が消滅します。つまり、25年後には誰でもそのデザインを自由に使えるようになってしまうのです。
一方、立体商標は10年ごとの更新手続きを続ける限り、永久に権利を維持できます。
これは、長期的なブランド価値に決定的な違いをもたらします。
60年間もブランド価値を育ててきたポッキーにとって、25年で権利が消滅する意匠権では不十分です。立体商標こそが、長年築いたブランドを永続的に守る唯一の選択肢だったのです。
ポッキー以外にも、立体商標として登録されている有名な形状があります。
コカ・コーラの瓶 : 独特の曲線形状
ヤクルト容器 : 特徴的なくびれのある形状
キッコーマン醤油卓上瓶 : 赤いキャップの醤油瓶
これらはすべて、「この形=このブランド」という強い認識が定着した結果、立体商標として保護されています。
製品開発に投じた情熱と資金を守り、リターンを最大化するためには、特許・意匠・商標といった知的財産権を単体で考えるのではなく、複合的に組み合わせる戦略が不可欠です。
製品の技術的なアイデアを保護し、技術的な模倣を防ぐ
保護期間:出願日から20年
製品の魅力的なデザインを保護し、デザイン的な模倣を防ぐ
保護期間:出願日から最長25年
製品のブランド名やロゴ、そして形状を保護し、ブランドの識別力を守る
保護期間:10年ごとに更新可能(永続的)
特許出願:技術的な新規性を失う前に
意匠出願:デザインの公開前に(公開後1年以内が期限)
商標出願:ブランド名・ロゴの登録
特許・意匠の権利維持
ブランド認知度の向上
市場でのシェア拡大
製品の形状が「ブランドの顔」として認識されているか評価
識別力が十分であれば、立体商標の出願を検討
意匠権の25年満了前に立体商標を取得すれば、途切れることなく保護継続
10年ごとの更新手続き
ブランド価値の永続的保護
競合他社の参入阻止
新製品を急いで発売したが、意匠出願を忘れてしまい、公開から1年以上経過。もう出願できない…
対策:製品発表の6ヶ月前には出願を完了させる
長年育てたブランドだが、意匠権が切れた途端に模倣品が出回り始めた…
対策:意匠権の存続期間中に立体商標の取得を検討
技術は守れたが、デザインを真似されて市場シェアを奪われた…
対策:特許・意匠・商標の複合的な権利戦略を構築
知的財産権は、単なるコストではありません。それは、製品の価値を「見える化」し、市場での独占権という形で収益力の源泉とするための強力な投資です。
特に、新製品の形状やパッケージを開発する際は、販売を急ぐあまり意匠権の出願期限(公開後1年)を逃してしまうケースが多くあります。
貴社の技術・デザイン・ブランドを多角的に分析
現在だけでなく、5年後・10年後・それ以降を見据えた知財戦略の設計
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