【商標】早く登録商標を取得できる!早期審査制度&ファストトラックの詳細解説!

著者

弁理士 西山 玄一郎(登録番号: 22420)

どんぐり特許商標事務所 代表
個人やスモールビジネスオーナーなどから商標、著作権、知財戦略に関する数多くの相談を多く受けており、専門用語を使わずに説明するため非常に好評。化学・バイオ系の特許にも強い。アプリ開発を行うITベンチャーの起業経験もある。


商標は、出願してから特許庁の審査官による審査を経てから登録されます。
出願をしたらすぐに審査が開始されるわけではなく、審査待ちの出願が大量に存在し、基本的には出願された順に審査が開始されます。審査が始まってからも審査には相当の時間を要します。
そのため、通常では、出願してから審査の結果が返ってくるまで 1年〜1年半 程度要することが一般的です。

ただ、例えば、すでに事業で商標を使用しており、®︎マークを付けたいとか、Amazonセラーのブランド登録をしたい、などの事情があるときには、早く登録商標を取得したいと思うことでしょう。

そのような要望に応えるために、早期審査制度やファストトラック制度という早く審査を進める制度が存在します。
これらの制度について詳しく解説します!

2023年4月 追記

2023年4月からファストトラックの制度が利用できなくなりました。

目次

早期審査制度とは?

特別な事情がある場合に、早く審査に着手させ、早く審査を終わらせることができ、たった2ヶ月程度で審査される制度です。
いわば審査待ちの順番を横抜かしすることができる制度です。

特別な事情とは、例えば、既に自分の事業でその商標を使用している場合や、他人に自分の商標を勝手に使われている場合などです。
このような場合には、一定の条件の下で早期審査の申請をすることで、早期に審査を受けることができます。
詳しい条件については後ほど解説します!

特許庁への手数料は不要です。ただし、追加の書類が必要なため、弁理士に依頼すると出願手数料に上乗せして別途手数料が発生します。

【メリット】
2ヶ月程度と圧倒的に早く登録商標(または審査結果)を得ることができる

【デメリット】
適用を受けるための条件を満たす必要がある、追加の資料を準備する必要がある、弁理士への追加費用が必要

なお、早期審査の要件を満たさないと特許庁で判断された場合は、通常の審査となります。

ファストトラックとは?(→2023年4月以降は利用できません)

ファストトラックは、基本的には通常の審査の範疇で行われますが、通常の審査よりも早い 6ヶ月程度 で審査が終わる制度です。
特許庁で定めた指定商品・指定役務から選択した、指定商品・指定役務のみを指定した出願をすることでファストトラックでの審査を受けることが可能です。

特許庁への手数料は不要です。また、弁理士への手数料も不要な場合も多いです。

【メリット】
6ヶ月程度にまで審査期間を短縮できる、追加の費用が不要、利用するハードルが低い

【デメリット】
自分の商品やサービスが新しいタイプであり、特許庁の指定商品・指定役務のリストにない場合は、利用することができない

なお、ファストトラックの要件を満たさないと特許庁で判断された場合は、通常の審査となります。

指定商品・指定役務とは何か?については以下の記事をご参照ください。

早期審査とファストトラックの違い

早期審査は特別な事情により優先して審査に着手し、審査の結論を早く出す制度です。そのため、利用するには一定のハードルがあります。
一方、ファストトラックは、出願する内容が一定の基準の中にあるため、特許庁の審査負担が少なく、審査の結論が早く出せるという制度です。

ファストトラックは誰でも利用できますが、早期審査は一定の基準を満たす必要があります。
ただ、基準を満たすのであれば、早期審査を利用した方が良いです。

2023年4月 追記

ファストトラックが利用できなくなりましたので、早期に権利化したいのであれば、早期審査制度を利用する必要があります!

早期審査を受けるには?

早期審査を受けるためには、以下の3パターンのうち、どれかに該当する必要があります。

前提として、出願しようとする商標を既にビジネスで使用している必要があります。
ビジネスの準備中でも可能な場合がありますが、構想段階ではNGです。

早期審査の対象となる3パターン

正直なところ、パッと見てもわからないかもしれませんので、自分が早期審査制度を利用できるかどうかは、ぜひ、弁理士にご確認いただければと思います!

出典:特許庁HP

対象1

  • 既に事業を実施
  • 事業で使用している指定商品・指定役務が含まれる
  • 第三者が使用第三者から警告ライセンス請求など

対象2 ※適用を受けやすいパターン

  • 既に事業を実施
  • 事業で使用している指定商品・指定役務のみを指定

対象3 ※適用を受けやすいパターン

  • 既に事業を実施
  • 事業で使用している指定商品・指定役務が含まれる
  • 特許庁で指定された指定商品・指定役務のみ指定 (ファストトラックの要件と同じ)

必要な手続き

上記、対象1〜3のいずれかに該当する場合は、商標登録出願と同時または出願後に
「早期審査に関する事情説明書」を提出します。

「早期審査に関する事情説明書」の具体的な書式は以下のリンクをご参照ください。
https://faq.inpit.go.jp/content/industrial/files/03_4_syouhyou.pdf

自分で「早期審査に関する事情説明書」を作成するのはややハードルが高いかもしれません。
また、この事情説明書を提出する方法は、紙で提出する方法と、オンラインで提出する方法があります。ただ、紙で提出すると、オンラインで提出するよりも1ヶ月程度遅くなりますので、できればオンラインで提出した方が良いです。

そのため、早期審査を利用される場合には、弁理士に相談されることをオススメします!

ファストトラックの適用を受けるには?

ファストトラックの場合、申請は不要です。以下の条件を満たす願書を出願するだけです。
特許庁で指定された指定商品・指定役務のみ指定

「特許庁で指定された指定商品・指定役務」とは、以下のいずれかに掲載されている指定商品・指定役務のことです。

  • 類似商品・役務審査基準
  • 商品・サービス国際分類表(ニース分類)

ファストトラックを利用することができるかどうかの確認方法は2種類あります。

ファストトラック審査サポートツールを利用する方法(最新)

2022年3月10日に特許庁から新たにファストトラックに該当する指定商品・指定役務かを確認するツールが公開されました。
このツールを利用することで簡単にファストトラックを利用することができる指定商品・指定役務かを確認することができます。

ファストトラック審査サポートツール(特許庁より)

ファストトラック審査サポートツールはこちら

J-PlatPatを利用する方法(従来からの手法)

以下のように、J-PlatPatの「商品・役務名検索」で、これら2つにチェックを入れて検索することで該当する指定商品・指定役務を見つけることができます。

J-PlatPat > 商標 > 商品・役務名検索
「類似商品・役務審査基準」と「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」にチェックを入れる

これらにリストアップされている指定商品・指定役務は、極めて一般的な商品やサービスであるため、新しい形態のビジネスの指定商品・指定役務は該当しない可能性があります
その場合には、ファストトラックを利用することはできませんが、これらのリストにない指定商品・指定役務を指定して出願することになります。

まとめ

「出願してから登録されるまで1年以上かかるのは待ってられない!」、「早く登録商標を取得したい!」というニーズは非常に高いです。早く登録商標を取得することで、自分のビジネスブランドを確実に守り、ビジネスを加速することができるでしょう。

そのため、特に、早期審査の要件を満たすのであれば、早期審査制度を利用しない手はないです。
ビジネスを開始する前に商標出願をするのではなく、むしろ、ビジネスを少しでも始めてから、早期審査制度を利用して商標出願するのが最も良い方法でしょう。

早期審査制度を利用する場合は、弁理士にご相談ください!弁理士である本記事の著者が親切・丁寧にヒアリングさせていただき、早期の登録商標取得に向けてサポートさせていただきます!

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