Facebook社の社名がMeta社に変更されたこともあり、メタバースへの注目度が増しています。懐疑的な意見もありますが、新たなビジネスチャンスとして大きな期待が集まっています。既にメタバース内のコンテンツを展開している先進的な企業もあり、今後も続々とコンテンツビジネスに参入する企業が増えていくものと考えられます。
この記事では、メタバース関連商標とは何か?そして、すでに登録商標として登録されているメタバース関連商標を紹介します。
これからメタバース上でビジネスをしようと考えている方は、メタバース関連商標の取得を検討されることをオススメします。新しい分野での商標の場合、どのような指定商品・指定役務にすれば良いのか悩むポイントです。そのため、本記事に記載の指定商品・指定役務をご参考にしていただければ幸いです。
もっと深くメタバース関連商標について、検討されたい場合には、メタバース関連商標の出願代理実績のある本記事の著者(弁理士)にご相談をください!
メタバースとは?
メタバースとは、オンライン上で永続的に存在する仮想空間のことであり、ユーザーがオンラインから退出したりログアウトしたとしても、そのオンライン環境はそのまま存在し、他のユーザーとオンライン空間を共有している仮想空間のことです。
最近メタバースに注目が集まっていますが、それ自体は約20年以上前から存在し、昔流行った「セカンドライフ」もそうですし、最近の様々なオンラインゲームもメタバースに含まれるものが多数存在します。
メタバースは現実世界とは別の仮想空間が世の中に一つだけ存在する、というものではなく、様々なプラットフォーム上に存在するため、多くのメタバース空間が存在します。
なぜ最近注目を集めているかというと、PCなどのデバイスの処理能力が大幅に向上したことで、従来よりも圧倒的に高精細でスムーズな3D映像を表示できることになったのに加え、フェイスブック社がメタ社に社名変更し、巨大プラットフォーム企業がメタバースに経営資源の多くを投入し始めていることから、ビジネスにおける期待感が増大していることが理由に挙げられます。
メタバース関連商標とは?
「メタバース商標」や「メタバース関連商標」という言葉が存在するのかわかりませんが(私が勝手に命名しました)、狭義では、メタバースの仮想空間上で使用される商標のことを指していますが、広義では、メタバースに関連するものはすべてメタバース関連商標に該当します。ただ、商標の仕組みからすると、メタバース上で使用する商標も、古くから使われているインターネット上で使用する商標も大きな違いはありません。
メタバースにより、アバターと呼ばれる仮想空間上で操ることができる自分のキャラクターが現実世界と同じように行動することができることから、仮想空間上でも日常生活と同じように様々な商品(あくまで仮想商品)に接したり、サービスを利用したりすることができます。そのため、それらの商品やサービスを提供する側にとっては、現実世界と同様、自社のブランドを守り、模倣されないようにする必要があります。そのため、仮想空間上でも商標の存在が重要になり、現実世界と同様、商標権として保護される必要があります。
メタバース関連商標の問題点
商標制度的には、メタバース商標という新たなジャンルが現れたわけではなく、「ソフトウェア」や「オンラインによる映像の提供」を指定商品・指定役務とするものです。
最近では、著名ブランドの企業が積極的に自社ブランド商標をメタバース商標として商標登録出願を行っています(別記事で紹介予定)。ただ、問題点もあります。世界的に有名な企業は、メタバース商標をアメリカの特許庁に出願しています。
現在の法律では、各国の法律はそれぞれの国でしか効力が及びません。それは商標制度を規定している商標法も同じです。つまり、日本の登録商標は日本国内でしか効力が発生しないということになります。
メタバースの最大の特徴の一つは、現実世界の国境が無く、国籍や言語など関係なく世界中の人と交流することができるところです。そのため、この特徴が故に問題点もあり、どの国の法律が適用されるのかなども含めて法整備が進んでいないという課題があります。
メタバース上で使用する登録商標を取得したいと考えた時に、どこの国の特許庁に商標を出願すれば良いのか?という点が必ずしも明確ではありません。サーバーが設置されている国の特許庁に出願すべきなのか?それとも商標に使われている言語の国の特許庁に出願すべきなのか?もちろん、日本、アメリカ、その他の関係する国全ての特許庁に対して商標登録出願すれば良いということになりますが、その場合、費用が莫大になってしまいます。外国に商標登録出願する場合、1ヵ国につき、50〜100万円程度必要になります。現状では、その答えは必ずしも明確ではありません。
オススメの方法としては、まずは日本の特許庁にできるだけ早くに商標登録出願をすることをオススメします。商標が登録されることで、その日本の登録商標に基づいて世界中で商標を取得することも可能なためです。
メタバース関連商標の分類
メタバース関連商標は多岐にわたるため、勝手に分類してみました。オーバーラップする部分もあるので、便宜的・暫定的な分類です。
- 仮想商品の商標
- NFTトークンによるコンテンツの商標
- 仮想空間プラットフォーム関連の商標
- その他
仮想商品の商標
メタバースの仮想空間上で取引(売買)される仮想商品などに使用される商標
NFTトークンによるコンテンツの商標
非代替性トークン(NFTトークン)による画像・映像などのコンテンツなどに使用される商標(上記仮想商品の商標も含まれる)に加え、現実世界で取引される画像・映像などのコンテンツなどに使用される商標も含まれる。
仮想空間プラットフォーム関連の商標
メタバース空間に使用される商標
メタバース関連登録商標の例
メタバースが注目を浴びるようになってからそれほど月日が経過していませんが、まだ多くはありませんが、日本においてもメタバース関連商標が出願され、既に登録商標として成立しているものがあります。ここでは、上記分類に沿って、具体的な登録商標を紹介します。
仮想商品の商標
PURPLE RAIN(登録商標第6047850号)
権利者:NPG Records, Inc.(アメリカ)
出願日:2017年8月14日
登録日:2018年6月1日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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9 | オンライン仮想世界において使用される音楽・映画・イベントチケット・衣料品・美容用品・履物・帽子・外套・上着・愛玩動物・ファッションアクセサリー・運動用品及び家庭用品を内容とする消費者向け製品/サービスを特徴とする消費者向けプログラム(ダウンロード可能な仮想商品) |
NPG Recordsはアメリカのレコード会社なので、仮想空間上でもエンターテイメントに関する仮想商品を扱うものとみられます。
NFTトークンによるコンテンツの商標
MissiD(登録商標第6529666号)
権利者:株式会社講談社
出願日:2021年6月21日
登録日:2022年3月17日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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9 | 暗号資産及びブロックチェーン技術を使用した非代替性トークン(NFTs)による取引を可能とするマルチメディアコンテンツを内容とするダウンロード可能な音声・映像ファイル, 暗号資産及びブロックチェーン技術を使用した非代替性トークン(NFTs)による取引を可能とするインターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル |
42 | ブロックチェーンを介した暗号資産及び非代替性トークン(NFTs)に関する電子商取引のための技術を利用したユーザー認証 |
NFTトークンによるコンテンツを対象とした登録商標です。
ETHERMON(登録商標第6534249号)
権利者:Water 21 Holding Limited(英国領ケイマン諸島)
出願日:2021年6月15日
登録日:2022年3月25日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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9 | ビデオゲーム用のダウンロード可能な仮想現実ゲームソフトウェア, ブロックチェーン技術を使用して非代替性トークン(NFT)及び暗号資産と共に使用するコンピュータソフトウェア, ブロックチェーン上の非代替性トークン(NFT)及び暗号資産取引を管理及び照合するためのコンピュータソフトウェア, ブロックチェーンのためのコンピュータソフトウェアプラットフォーム, オンライン上の仮想世界及びコンピュータゲームで使用するためのデジタルトークン及び非代替性トークン(NFT)を特徴とするコンピュータプログラム |
権利者の情報が検索しても出てこないため、詳しい情報は不明です。おそらくゲーム開発会社とみられ、ゲームの延長でNFTを使用したコンテンツを提供するものと予想できます。
SAKS(登録商標第6540082号)
権利者:サックスドットコム リミテッド ライアビリティ カンパニー(アメリカ)
出願日:2021年9月21日
登録日:2022年4月1日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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9 | ブロックチェーン技術を用いた複製・偽造の不可能な証明書が付与された画像・動画ファイル, デジタルアートとして流通する、ブロックチェーン技術を用いた複製・偽造の不可能な証明書が付与された画像・動画ファイル, 収集価値のある、ブロックチェーン技術を用いた非代替性トークンによって認証された画像・動画ファイル |
SAKS.comはアパレルなどの通販を運営しているようで、仮想空間上でも展開を予定しているものと思われます。
図形商標(登録商標第6545034号)
権利者:NFTECH PTE. LTD.(シンガポール)
出願日:2021年3月25日
登録日:2022年4月15日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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9 | 暗号資産及びブロックチェーン技術を利用した非代替性トークン(NFTs)の管理及び検証用のコンピュータソフトウェア, 暗号資産及びブロックチェーン技術を使用した非代替性トークン(NFTs)による取引の管理用のコンピュータソフトウェア, 暗号資産及びブロックチェーンにおける非代替性トークンによる取引の管理及び検証用のコンピュータソフトウェア |
36 | 非代替性トークン(NFTs)の分野における前払い式電子仮想通貨の売買の仲介, 暗号資産の売買, 他人のために行う暗号資産の管理, 暗号資産の送金事務の取扱い, 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換の媒介・取次ぎ・代理, 暗号資産・非代替性トークン(NFTs)及びブロックチェーン技術を利用した金融又は財務取引, 暗号資産の分野におけるベンチャーキャピタルへの資金の貸付け |
42 | ブロックチェーンを介した暗号資産及び非代替性トークン(NFTs)に関する電子商取引のための技術を利用したユーザー認証, ブロックチェーン技術を利用するためのコンピュータソフトウェアの設計, 暗号資産及び非代替性トークン(NFTs)の取引を容易化するためのコンピュータソフトウェアの設計, 暗号資産及び非代替性トークン(NFTs)の取引を容易化するためのコンピュータソフトウェアプラットフォームの提供(PaaS) |
仮想空間プラットフォーム関連の商標
図形商標(登録商標第6032898号)
権利者:Twitch Interactive, Inc(アメリカ)
出願日:2017年3月22日
登録日:2018年4月6日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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35 | オンラインコミュニティの会員がストリーミングビデオゲーム及び関連コンテンツを特徴とする指定されたウェブサイトにおいて使用するための仮想商品を提供するためのコンピュータソフトウェアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 |
41 | レクリエーション目的でユーザーがソーシャルゲームを通じて相互に交流することができる仮想環境における娯楽情報の提供, レクリエーション・レジャー・娯楽目的でユーザーが相互に交流することができる仮想環境における娯楽情報の提供, オンラインによる娯楽目的の仮想環境において使用するダウンロード不可能な仮想被服・カラー・バッジ・ツール・武器の提供を内容とするオンラインゲームの提供 |
42 | 仮想コンピュータシステム及び仮想コンピュータ環境提供するためのクラウドコンピューティング, 仮想コンピュータシステム・グラフィックプロセッサーユニット(GPUs)・仮想コンピュータ環境を提供するためのクラウドコンピューティング |
Twitch(ツイッチ)とは、Amazon.com, Inc.が提供している動画配信用プラットフォームです。
Twitch(ツイッチ)とは、Amazon.com, Inc.が提供している動画配信用プラットフォームです。
GLITCH(登録商標第6439057号)
権利者:Twitch Interactive, Inc(アメリカ)
出願日:2020年11月18日
登録日:2021年9月6日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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35 | 仮想商品を提供するためのコンピュータソフトウェア・コンピュータソフトウェア・コンピュータハードウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 |
41 | ユーザーがソーシャルゲームを通じて交流することができる仮想環境において行う娯楽の提供, ユーザーがソーシャルゲームを通じて交流することができる仮想環境を提供するための娯楽施設の提供, ユーザーがレクリエーション目的・レジャー目的・娯楽目的で交流することができる仮想環境における娯楽の提供, ユーザーがレクリエーション目的・レジャー目的・娯楽目的で交流することができる仮想環境を提供するための娯楽施設の提供 |
42 | コンピュータユーザーによる議論への参加・フィードバックの獲得・仮想コミュニティの形成・ソーシャルネットワークへの従事のためのオンラインコミュニティの作成用ウェブサイトの設計・作成・保守・ホスティング, コンピュータユーザーによる議論への参加・フィードバックの獲得・仮想コミュニティの形成・ソーシャルネットワークへの従事のためのオンラインコミュニティの作成用コンピュータソフトウェアの提供・ホスティング |
45 | ユーザーがレクリエーション目的・レジャー目的・娯楽目的でソーシャルゲームを通じて交流することができる仮想環境の提供を内容とするソーシャルネットワーキングサービスの提供 |
GLITCHとは、ブラウザ上でwebアプリを開発できる次世代プラットフォームです。
NOVI(登録商標第6476236号)
権利者:Facebook, Inc(アメリカ)
出願日:2020年5月26日
登録日:2021年11月25日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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35 | 他のユーザーとの仮想商品の販売及び取引のためのウェブサイトを介したオンライン市場の提供 |
メタ社の商標です。「NOVI」は既にリリースされているブロックチェーン技術を用いたデジタル通貨プラットフォームです。
SBINFT(登録商標第6559195号)
権利者:SBIホールディングス株式会社
出願日:2021年9月17日
登録日:2022年5月20日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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35 | オンラインによる非代替性トークンにより証明可能なデジタルコンテンツ商品の競売の提供, オンラインによる非代替性トークンにより証明可能なデジタルアート作品その他の美術品の競売の提供, 非代替性トークンにより証明可能なデジタルコンテンツ商品の買い手及び売り手のためのオンライン市場の提供, |
36 | オンライン市場形式で提供される、非代替性トークンにより証明可能なデジタルアート作品その他の美術品の売買の媒介・取次ぎ又は代理 |
大手のSBIさんもメタバースを視野に入れていることがうかがい知ることができますね。
その他
図形商標(登録商標第6548534号)
権利者:株式会社Too
出願日:2021年6月22日
登録日:2022年4月25日
区分 | 指定商品・指定役務(メタバース関連のみ抜粋) |
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41 | ブロックチェーン及びこれを用いた非代替性トークン(NFT)技術に関する知識の教授及びこれに関する情報の提供, ブロックチェーン及びこれを用いた非代替性トークン(NFT)技術に関するセミナーの企画・運営又は開催並びにこれに関する情報の提供 |
42 | ブロックチェーン及びこれを用いた非代替性トークン(NFT)技術に関するコンピュータソフトウェアの設計・作成又は保守及びこれに関する指導・助言・コンサルティング及び情報の提供, ブロックチェーン及びこれを用いた非代替性トークン(NFT)技術に関する試験又は研究及びこれに関する情報の提供, ブロックチェーン及びこれを用いた非代替性トークン(NFT)技術に関するコンピュータソフトウェアの提供及びこれに関する情報の提供 |
株式会社Tooさんはデザイン会社です。様々な取り組みをされているようです。
メタバース関連商標を取得するには?
メタバース関連商標を取得するには、各国の特許庁に商標登録出願をする必要があります。特にメタバースは日本のことだけを考えていてはいけません。世界規模で検討する必要があります。より抜け漏れのない商標権を取得するには、日本、アメリカ、欧州、中国での商標権取得をオススメします。
出願するとなると、まずは上記の国や地域で既に商標登録されていないか確認します。登録される可能性があるのであれば、まずは日本の特許庁に商標登録出願を行い、できるだけ早くに登録を受けます。その登録商標に基づき、外国でも商標登録を受けることができます。
具体的な方法や、登録可能性については、ぜひ、メタバース関連商標の出願実績のある本記事の著者(弁理士)にご相談ください!