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結論から言えば、商標登録の価値を決めるのは「権利そのもの」ではなく「その裏にある事業」です。取っただけの商標はほぼ実費程度の評価にとどまり、知名度やブランドが育つほど評価額は高まります。
知的財産は「財産」と呼ばれます。ところが、自分の取った権利に財産的な価値がある、値段がつくものだと理解している人は、むしろ少数だと思います。
特許や意匠、商標を取る理由は、自分の商品やブランドを他社に真似されたくない、あるいは他人から権利行使されずに自分で事業を続けられるよう、ビジネスの土台を築くため。多くの人は、そこで止まっています。実務をしていても、そう感じることがあります。
価値について考えるきっかけとして一番多いのは、権利を譲渡するときです。
出願中であれば、名義変更届で名義を変えるだけの手続きです。一方、登録された後や特許が成立した後は、名義変更ではなく「権利の移転」になります。
このとき、譲渡証書という文書を残すのですが、譲渡証書には、譲渡の金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。そこで、「じゃあ、この権利の金額っていくらなの?」と初めて考える人が結構多いのです。
知的財産の値段には、明確に固定された基準はありません。そのうえで、あまり使われていない、単に取っただけという権利であれば、権利の取得にかかった費用にプラスアルファした程度、ほとんど実費に近い金額で算出すると考えられます。
ところが、事業が育てば育つほど、ブランドが大きくなればなるほど、その権利の価値は高まっていきます。
M&Aは、そんなに頻繁に起こるものではありません。ただ、譲渡はわりとありますし、ライセンスもよくあることです。
譲渡するにしても、ライセンスするにしても、せっかく取った権利は、安く評価されるより高く評価されたいはずです。そうなるために何をするか。その視点を持ってビジネスをすることが、むちゃくちゃ大事だと思っています。
譲渡やライセンスで、権利の値段をどう考えればよいか迷ったときは、弁理士に相談していただければ、一緒に整理できます。

何が評価額を左右するかは、商標と、特許・意匠とで違います。

技術がありふれたもので、特許や実用新案の登録もありふれた技術の場合は、デザインやブランドの力で勝負するしかありません。そういうときこそ商品力が試され、意匠の力が大きくなると思います。
ブランドが育つと、名前にどれだけの価値がつくのか。その例が「東京ガールズコレクション」です。このファッションイベントの商標権は、2015年に8億円で売買されました(報道による)。初めての開催から、約10年後のことです。
本当に成功した事例だと思います。そこに至るまでには、相当な宣伝広告費をつぎ込んでいることは容易に推測できます。それでも、10年という期間で地道な努力を重ねてきたことは間違いないと思います。
ブランドの力は、何もしなければつきません。商品の品質が良いことと役に立っていることそしてその情報を発信していること、日頃の積み重ねがすべてです。
商品の良さを伝える宣伝広告をしっかり作る
SNSなどで発信する
発信を長く続ける
中小企業や個人のお店が商標の価値を育てるには、世の中に広く知ってもらうことが重要で、情報発信はずっと継続して行う必要があります。
ただし、単に情報発信をすればよいわけではありません。商品そのものの質も大事ですし、その情報がブランドの力につながるように、発信の仕方を工夫する必要があります。
大事なのは、発信の中でしっかり自分のブランドを見せることです。ブランドが持っているイメージを、具体的な商標、つまり名前やロゴに結びつけて、一体として発信していく。これが非常に重要だと考えています。
知的財産を、単なるコストだと思っている人もいます。しかし、ブランド力を高めたり、商品力を高めたりすることで、知的財産はコストではなく資産になります。そこを意識して、日頃から自分の事業を育ててください。
Q. 数年前に商標登録しましたが、ほとんど使っていません。この商標権には、どのくらいの価値がありますか?
A. 明確な基準はありませんが、あまり使われていない、単に取っただけの権利であれば、取得にかかった費用にプラスアルファした程度、ほぼ実費に近い金額になると考えられます。事業やブランドが育つほど、価値は高まります。
Q. 商標権の値段なんて考えたこともありませんでした。どんなときに値段が必要になるのですか?
A. 一番多いのは、権利を譲渡するときです。登録後の譲渡は権利の移転になり、譲渡証書に譲渡金額に応じた収入印紙を貼るため、そこで初めて金額を考える人が多いです。ライセンスやM&Aでも、権利の値段が問われます。
Q. 小さなお店を経営しています。自分の店名の商標の価値を上げるには、何をすればいいですか?
A. 知名度を上げることが一番大きなポイントです。宣伝広告やSNSでの発信を続け、ブランドのイメージを名前やロゴに結びつけて、一体として発信していくことが大切です。
Q. 特許や意匠も持っています。商標と同じように、知名度で価値が決まるのですか?
A. 商標とは少し違います。特許は、その技術で商品がどれだけ選ばれているか、オリジナリティがあるか。意匠は、その見た目でお客さんがどれだけ商品を選んでいるかが大事になります。
Q. まだ出願中の商標を、別の会社に譲ることになりました。登録後に譲る場合と、手続きは違いますか?
A. 違います。出願中であれば名義変更届で名義を変えるだけですが、登録後は「権利の移転」になります。譲渡証書を作成し、譲渡金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。
Q. 商標登録の費用が、ただの出費に思えてしまいます。商標はコストなのでしょうか?
A. 取っただけで使われていなければ、実費程度の評価にとどまります。一方、ブランド力や商品力を高めていけば、知的財産はコストではなく資産になります。東京ガールズコレクションの商標権が約10年後に8億円で売買された例もあります。
商標・ブランドづくりについて、あわせて読んでおきたい記事です。
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この記事はYouTubeチャンネル「どんぐり特許商標事務所【弁理士 西山玄一郎】」のショート動画をもとに、動画では触れられなかった内容まで掘り下げて作成しています。
記事の執筆者

西山 玄一郎
にしやま げんいちろう
どんぐり特許商標事務所/代表弁理士
弁理士登録番号 第22420号
大手製薬会社で創薬研究、知的財産部で特許・意匠の出願・調査・訴訟に従事し、米国の特許事務所・法律事務所へ留学。ITベンチャーの起業・事業売却、AI創薬ベンチャーのサポートを経て、2021年にどんぐり特許商標事務所を開業。「権利をとる側」と「事業をつくる側」の両方の視点から、個人事業主・小規模事業者の知的財産をサポートしています。

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