弁理士 西山 玄一郎(登録番号: 22420)
どんぐり特許商標事務所 代表
個人やスモールビジネスオーナーなどから商標、著作権、知財戦略に関する数多くの相談を多く受けており、専門用語を使わずに説明するため非常に好評。化学・バイオ系の特許にも強い。アプリ開発を行うITベンチャーの起業経験もある。
自分の登録商標を取得したい!と思い、商標登録出願をする時に検討すべき大事な項目が3つあります。
- 商標登録を受けようとする商標
- 指定商品・指定役務
- 区分
「商標登録を受けようとする商標」とは、そのものズバリ商標のロゴなどのマークのことです。
「指定商品・指定役務」とは、商標を何に使うのか、というものを指定するもので、商標権の権利範囲を定めるものの一つになります。これはとても重要なものです。
そして、「区分」とは、指定商品・指定役務のジャンルのようなものです。
この記事では、区分の役割と、なぜ大事な項目なのか?どのようにして区分を決めれば良いのか解説いたします。
区分の役割
区分とは、指定商品・指定役務のジャンルのようなもので、区分の一番の役割は、登録商標を取得するのに必要な特許庁に支払う手数料の額を決めるものです。
つまり、区分の数が増えるほど、特許庁に支払う費用が増えることになります。
必要な費用については、別の記事で解説していますので、そちらをご参照ください。
区分の種類
区分は、第1類から第45類まであります。
第1類から第34類までが商品に関するもの、第35類から第45類までがサービスに関するものです。
各区分の概要と指定商品・指定役務の例を紹介します。
商品に関する区分と指定商品の一覧
区分 | 区分の概要 | 指定商品の例 |
---|---|---|
第1類 | 化学物質 | 化学品 肥料 人工甘味料 |
第2類 | 塗料・インク | 腐食防止剤 染料 絵の具 |
第3類 | 洗剤・化粧品 | 洗濯用柔軟剤 化粧品 つけまつ毛 |
第4類 | 燃料 | 固形潤滑剤 燃料 ろうそく |
第5類 | 薬剤・衛生品 | 衛生マスク サプリメント 乳幼児用食品 |
第6類 | 金属 | 金属鉱石 金属製金具 ワイヤロープ |
第7類 | 機械 | ミシン 自動販売機 食器洗浄機 |
第8類 | 手動工具 | ピンセット 缶切 スプーン |
第9類 | 幅広いジャンルの器具 | 水泳用耳栓 インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル 電子出版物 |
第10類 | 医療器具 | おしゃぶり 家庭用電気マッサージ器 耳かき |
第11類 | 熱源を有する器具 | 業務用食器乾燥機 湯たんぽ ストーブ類(電気式のものを除く。) |
第12類 | 乗り物 | 自動車 そり タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片 |
第13類 | 火器 | 鉄砲 火薬 爆薬 |
第14類 | 貴金属・宝石 | キーホルダー 身飾品 時計 |
第15類 | 楽器 | 楽器 楽譜台 指揮棒 |
第16類 | 紙製品 | 紙製包装用容器 プラスチック製包装用袋 印刷物 |
第17類 | プラスチック・ゴム | 電気絶縁材料 ゴムひも ゴム |
第18類 | 革製品 | 皮革製包装用容器 傘 かばん類 |
第19類 | 金属製でない建築材料 | 木材 石材 建築用ガラス |
第20類 | 家具・プラスチック製品 | クッション うちわ 買い物かご |
第21類 | 日用品 | 化粧用具 ガラス製又は陶磁製の包装用容器 花瓶 |
第22類 | 繊維製品 | 布製包装用容器 編みひも ハンモック |
第23類 | 糸 | 糸 毛糸 |
第24類 | 織物 | メリヤス生地 布製身の回り品 カーテン |
第25類 | 衣服 | 被服 ベルト 仮装用衣服 |
第26類 | 裁縫用品 | リボン 造花 ボタン類 |
第27類 | マット・壁紙 | 敷物 壁紙 |
第28類 | 玩具 | おもちゃ 人形 釣り具 |
第29類 | 食品 | 菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。) 食肉 冷凍果実 |
第30類 | 加工食品・調味料 | コーヒー パン 弁当 |
第31類 | 動植物 | 野菜 花 鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。) |
第32類 | 飲料(ビール含む) | ビール 清涼飲料 乳清飲料 |
第33類 | 酒(ビール除く) | 清酒 焼酎 みりん |
第34類 | タバコ | たばこ 電子たばこ マッチ |
サービスに関する区分と指定役務の一覧
区分 | 区分の概要 | 指定役務の例 |
---|---|---|
第35類 | 広告・小売 | 広告業 被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 |
第36類 | 金融・保険・不動産 | 商品代金の徴収の代行 損害保険の引受け 建物の貸与 |
第37類 | 建設・修理保守 | 建設工事 自転車の修理 おもちゃ又は人形の修理 |
第38類 | 電気通信 | 放送 電気通信 |
第39類 | 輸送 | 車両による輸送 駐車場の管理 自動車の貸与 |
第40類 | 加工・レンタル | 裁縫 製本 発電機の貸与 |
第41類 | 教育・娯楽 | セミナーの企画・運営又は開催 インターネットを利用して行う映像の提供 写真の撮影 |
第42類 | 試験・研究 | デザインの考案 機械器具に関する試験又は研究 電子計算機用プログラムの提供 |
第43類 | 飲食・宿泊 | 飲食物の提供 宿泊施設の提供 食器の貸与 |
第44類 | 医療・美容 | 美容 健康診断 調剤 |
第45類 | 冠婚葬祭・法務 | 葬儀の執行 家事の代行 衣服の貸与 |
区分の選び方
では次に、どのようにして区分を選べば良いのか紹介します。
区分は指定商品・指定役務と密接に関係しているため、区分と指定商品・指定役務を一緒に検討する必要があります。
特に、区分よりも指定商品・指定役務の方が重要度が高いため、ここでは指定商品・指定役務から区分を調べる方法をご紹介します。
J-PlatPatの商品・役務名検索
自分でコーヒーショップを経営しており、次のようなことをしている場合、どのような指定商品・指定役務で、どの区分になるか紹介します。
- 店内でコーヒーを提供
- テイクアウト用のコーヒーも販売
- 焙煎したコーヒー豆を販売
まずは特許情報プラットフォームのJ-PlatPatにアクセスします。
商標の中の「商品・役務名検索」を選択します。
検索キーワードの商品・役務名に「コーヒー」と入力し、検索します。
検索の結果、500件以上の指定商品・指定役務がありました。
この中から自分のビジネスに合った指定商品・指定役務を選びます。
もう少し絞り込むために、「データ種別」の「類似商品・役務審査基準」と「採用できない商品・役務名」にチェックを入れて再度検索しました。その結果14件になりました。
今回の例では、以下のような指定商品・指定役務と区分が考えられます。
- コーヒー(区分:第30類)
- 焙煎したコーヒー豆(区分:第30類)
- 茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(区分:第35類)
- 茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供(区分:第43類)
今回の例では、第30類、第35類、第43類の3種類の区分を選ぶことができました。
では、これらがそれぞれどういうもので、どう違うかは、次のようになります。
第30類
持ち帰り用の商品としてのコーヒーに対して使用する場合の区分です。店内で飲食する場合のコーヒー提供の場合は、第43類になります。
第35類
コーヒーの小売サービスに対して使用する場合の区分です。
第43類
飲食店内でコーヒーを提供するときに使う区分です。テイクアウトの場合は、第30類になります。
まとめ
今回は、商標の区分とはどういうものか、どういう種類があるのか、どのようにして区分を選ぶのかについて解説しました。
区分の数により出願手数料が決まるので、いくつの区分で出願するかはとても重要です。コストと権利範囲のバランスを取ってどのような区分、指定商品・指定役務で出願するのかよく検討されると良いでしょう。
自分で区分、指定商品・指定役務を決められるのであれば良いですが、少しでも不安や、わからないことがあるのであれば、専門家である弁理士に相談されることをオススメします!
弁理士であるこの記事の著者がじっくり丁寧にあなたのビジネスに合った区分、指定商品・指定役務をご提案させていただきます。お気軽にご相談いただければと思います。