【商標】簡単!商標を検索・確認する方法🔍 詳細解説!

著者

弁理士 西山 玄一郎(登録番号: 22420)

どんぐり特許商標事務所 代表
個人やスモールビジネスオーナーなどから商標、著作権、知財戦略に関する数多くの相談を多く受けており、専門用語を使わずに説明するため非常に好評。化学・バイオ系の特許にも強い。アプリ開発を行うITベンチャーの起業経験もある。


自分のビジネスを始めるとき、屋号や自分の商品・サービスの名前を考えて使っていこうとすると思います。そこで気にかけた方が良いのが、商標についてです。

商標と聞くと、少し難しいイメージがあるかもしれませんが、単にブランド名のことで、自分の屋号や商品・サービスが自分のものであると他の人から認識してもらうためのものです。

自分の商標が自分にとって大事なことであると同様に、他の人もその人自身の商標はとても大事なものです。そのため、自分の商標を考えたら、次にその商標を他の人が使っていないかどうかを確認することは重要なことです。

もし、他の人が登録商標として、権利を持っている場合は、その商標やその商標に似たものを勝手に使うことはできません。勝手に使うと、その人の商標権を侵害することになります。

この記事では、他人の登録商標をチェックするべき理由と、他人の登録商標をチェックする具体的な方法を解説します。

難しいとか、わからないことがあれば、お気軽に弁理士である著者にご相談ください!

目次

他人の登録商標を事前に確認するべき理由

他人の登録商標を事前に確認するべき理由として、主に2つあります。

  1. 自分の商標が、他人の登録商標と似ていると、その商標を使うことができない
  2. 自分の商標を登録しようとしても、似ている他人の登録商標が存在すると登録できない

それぞれについて解説します。

① 自分の商標を使うことができない可能性がある

自分の商標と似ている他人の登録商標が存在する場合、その商標を使ってビジネスをすると、商標権の侵害となってしまう可能性があります。他人の商標権を侵害してしまうと、その商標の使用をやめないといけなく、場合によっては損害賠償金を支払う必要があります。

侵害したからといって、いきなり訴状が届き、訴訟手続が開始されることは通常ありません。まずは、商標権利者から警告書や申出書などが届き、状況の確認と説明が求められます。その段階で適切に対処することで裁判になることを回避できます。
対処法としては様々あり、例えば、

  • その商標の使用をやめて、別の商標に変更する
  • 同じ商標を使い続けたいのであれば、ライセンス料を支払って使わせてもらう交渉をする
  • 商標権者の商標権をつぶして、自分の商標を使えるようにする

などが考えられます。時間と労力とお金がかかることが多いので、こういったリスクを未然に排除できるのであれば排除しておきたいものです。

② 自分の商標を登録できない可能性がある

自分の商標を他人に真似されないためにも、また、他人に似ている商標を登録されないためにも、自分の商標を特許庁に登録することができます。
しかし、似たような商標が他人によって既に登録されていると、その自分の商標は登録することができません。
せっかく高いお金を支払って商標登録出願しても、登録できない、となると余計な出費にもなりますし、余計な時間を使ってしまうことになります。

他人の登録商標の確認方法

上記の理由から、事前に自分の商標がすでに他人によって登録されていないかどうかを確認することはとても大事です。
そこで、他人の登録商標の確認方法を解説していきます。
①商標の検索方法、②チェックすべき項目、の2つの構成で解説します。

① J-PlatPatで商標の検索方法

商標を検索する方法として、最も簡単で確実な方法は、特許情報プラットフォーム J-PlatPat で検索する方法です。

今回は、本記事の著者の事務所名「どんぐり特許商標事務所」について、商標登録出願を検討していると仮定した場合に、どのように調べていくかご紹介します。

J-PlatPatにアクセスし(検索で「jpp」でもHitします🔍)、メニューの「商標」から「商標検索」を選択します。

J-PlatPatの商標検索

今回は、「どんぐり特許商標事務所」を調べたいのですが、検索ではキーとなる部分の「どんぐり」を検索することにします。
なぜなら、「どんぐり特許商標事務所」フルネームで検索すると何もヒットしないと考えられるためです。商標を検索するときは、漏れの無いように、出来るだけ多くヒットするような検索方法を採る必要があります

商標検索

「商標(検索用)」の欄に「どんぐり」を入力して、検索してみます。

商標(検索用)で「どんぐり」を検索

その結果、8件がヒットしました。

商標検索で「どんぐり」を検索した結果

次に、ワイルドカードを使用して検索してみます。
ワイルドカードを使用することで、語句の前や後に他の文字が含まれているものも、含まれていないものも両方合わせて検索することができます

ワイルドカードを使用した検索方法は、「?(半角ハテナ)」を語句の前や後、または前と後の両方に入れます。

商標(検索用)でワイルドカードを使用した検索

その結果、70件ヒットしました。当然ですが、ワイルドカードを使用した検索の方が多くヒットすることから、漏れなく商標を検索するために、常にワイルドカードを使用して検索すると良いでしょう

商標(検索用)でワイルドカードを使用して検索した結果

称呼検索

次に、商標の読み方(音)による検索の「称呼検索」を行います。なぜ、「称呼検索」を行うかというと、検索する文字と異なる表記の商標も読み方さえ同じであればヒットするためです。

例えば、商標検索で「まるい」と検索しても、「丸い」「丸井」「圓居」「マルイ」などは検索でヒットしません。そのため、読み方で検索すればこれら全て「マルイ」と読むことができるため、検索することができます。

称呼検索では、全角カタカナで入力します。ここでは、漏れなく検索するために、「ドングリ」の前後にワイルドカードを入れて検索します。

称呼検索でワイルドカードを使用して検索

検索の結果、96件の商標がヒットしました。

称呼検索の結果

ちなみに、ワイルドカードを使用せずに称呼検索した場合は、52件でしたので、やはりワイルドカードを使用して検索する方が漏れなく検索できることがわかります。

商標検索と称呼検索結果の差分

ここで、通常の商標検索と称呼検索でヒットする件数に差があることがわかりました。今回のケースでは26件、称呼検索の方が多くヒットしました。

詳しく検索結果を見てみると、商標検索でヒットした商標は、全て称呼検索でヒットしていることがわかりました。称呼検索でのみヒットした商標の一例は次のようなものがあります。

商標検索と称呼検索の差分

例えば、一番下の「ドングリ」は、カタカナであるだけなのに商標検索ではヒットしなかったことがわかります。
商標の世界では、単にひらがなとカタカナの違いは類似商標であると判断されるため、ひらがなとカタカナの違いだけの商標も把握しておくことは非常に重要です。

検索方法のまとめ

ここまで、商標検索と称呼検索を行いましたが、商標を検索する上で大事なことをまとめると以下のとおりです。

  • 検索にはワイルドカード「?(半角ハテナ)」を必ず使用する
  • 商標検索だけでなく、称呼検索も必ず行う

② 検索結果からチェックすべき項目

検索によって、自分の商標に近い商標が見つかった場合、どの項目をチェックすべきか分かりにくいと思います。
そこで、見るべき4つの項目について解説いたします。

ここでは、先ほどの「商標検索と称呼検索結果の差分」の中で紹介した図の一番下の登録商標「ドングリ」(登録商標第6118245号)を例に解説します。

商標の詳細画面

商標

商標を調べるにあたって最も大事なものが「商標」そのものです。これが自分の使いたい商標と似ているかどうかを判断する必要があります。

今回の例では、商標は「ドングリ」です。この例では、「標準文字商標」という装飾などが無い、単なるフレーズの商標として登録されていることがわかります。

標準文字商標についての解説はこちらの記事をご参照ください。

「称呼(参考情報)」として記載されている部分は、称呼検索のために、単に特許庁がその商標を何と読むことができるかを勝手に記載したもので、特に権利の大きさなどには関係ありませんので、この欄についてはチェックすべき項目としてはそれほど重要ではありません。

検索結果詳細の商標部分

重要なことは、対象となる商標そのものが、自分の商標と似ているかどうかです。

今回の例では、他人の商標が「ドングリ」で、自分の使いたい商標が「どんぐり特許商標事務所」です。
「どんぐり特許商標事務所」は、「どんぐり」と「特許商標事務所」に分解することが可能で、「ドングリ」と「どんぐり」はカタカナとひらがなの違いだけで、類似していると判定できます。
一方、「特許商標事務所」はビジネスの内容を示す付加的な文字であるため、商標としての重要度は「どんぐり」部分よりも低くなります。
ただ、商標全体として考えると「ドングリ」と「どんぐり特許商標事務所」では、異なるものとして一般に認識し得るものであると考えられるため、商標としては似ていない、と判断できます。

このような感じで、商標が似ているかどうかの判断は、ケースバイケースで判断します。結構難しい場合が多いので、ぜひ、専門家である弁理士にご相談ください!

商標の類似については以下の記事で紹介しています。

指定商品・指定役務

商標の次に重要なものが、指定商品・指定役務です。
商標権の権利範囲を決めるものは、「商標」と「指定商品・指定役務」だからです。指定商品・指定役務とは、商標をどの商品・サービスに使うか、をあらかじめ指定するものです。

今回の例では、多くの指定商品が指定されています。主に調理器具です。

検索結果詳細の指定商品・指定役務部分

商標と同じように、対象の商標の指定商品・指定役務と、自分の商品やサービスが似ているかどうかを判断することになります。

今回の例では、調理器具と特許事務所のサービスでは、全く異なるため、指定商品・指定役務が異なっていることがわかります。

実際には、一つ一つの指定商品・指定役務に対して、自分の商品・サービスが似ているかどうかを判定します。全ての指定商品・指定役務について似ているかどうかを判定し、一つも似ているものがないと判定できた場合は、例え商標が似ていたとしても、その商標を全く気にする必要はありません

指定商品・指定役務とは何かについては、以下の記事で解説していますので、そちらをご参照ください。

類似群コード

指定商品・指定役務が自分の商品・サービスと似ているかどうかを判定するときに非常に便利で重要なものが「類似群コード」です。類似群コードとは、商品やサービスに個別の番号が振られており、同じ番号の商品やサービスは類似である、と推定されるものです。

指定商品・指定役務だけを見て自分の商品・サービスと似ているかどうかを判定することが難しい場合は、この類似群コードを一つの指標として判定します。

検索結果詳細の類似群コード部分

類似群コードの詳しい説明については、以下の記事で紹介しています。

ステータス

ステータスとは、その商標の審査状況や有効に権利が存在しているか、権利が消滅しているか、などの状況を表しているものです。
J-PlatPatで表示されるステータスのバリエーションは15種類もありますが、そのほとんどは「審査待ち」「継続」のどちらかである場合が多いです。

ここでは、わかりやすいように、その商標の存在を「注意すべき商標」「無視しても良い商標」「半年後に再度確認すべき商標」の3パターンで区分して紹介します。

注意すべき商標のステータス
存続-登録-継続商標権が有効に存在している商標
存続-登録-異議申立のための公告商標権がまもなく発生する商標
注意すべき商標
無視しても良い商標
消滅-登録-権利満了商標権の更新がされず、消滅した商標
消滅-登録-権利放棄商標権が放棄され、消滅した商標
消滅-登録-取消/無効商標権がつぶされ、消滅した商標
終了-出願-取下/放棄商標出願が取下げられて、権利化断念した商標
終了-出願-拒絶/却下又は無効審査で拒絶されて、権利化断念した商標
無視しても良い商標
半年後に再度確認すべき商標
係属-出願-審査待ち審査前の商標
係属-出願-審査中審査中の商標
係属-出願-拒絶査定不服審判中特許庁の拒絶に対して権利化しようとしている商標
係属-出願-異議申立のための公告ほぼほぼ審査が終わった商標
係属-出願-異議申立中つぶされかけている商標
存続-登録-異議申立中つぶされかけている商標
存続-登録-取消/無効審判中つぶされかけている商標
その他ステータス不明の商標
半年後に再度確認すべき商標

まとめ

商標を検索する方法はとても簡単で、見るべきポイントも多くなく、誰でもできます。
特に検索方法として、称呼検索を行うことと、ワイルドカードを使って検索することが重要です。

ただ、見つかった他の人の商標と自分の商標が似ているかどうかや、指定商品・指定役務の関係については、判断が難しいケースが多いように思います。
そのような場合には、専門家である弁理士に相談することをオススメします。弁理士である本記事の著者が親切・丁寧にご相談に応じますので、気軽にご相談ください!

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