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商標を出願する前には、競合も含めて、似た商標が先に出願・登録されていないかを調べる必要があります。ところが、「競合がまだ出願中の商標は見られないので、調べようがない」と思われがちです。実際には、競合が出願した商標は、出願から1か月程度で公開され、誰でも見ることができます。どんな名前で、どの分野の商品やサービスに出てこようとしているのかが、発表より前にぼんやり見えてくることがあります。競合の知的財産は、自社のビジネスに生かせる情報源です。
商標を出願すると公開されること自体は、多くの事業者の方がご存じだと思います。一方で、競合の商標の動きまで気にしている事業者は多くありません。
そもそも、自社の知財ではなく、競合の知的財産の情報がビジネスに生かせるということが、あまり知られていません。実際、競合の動きについて相談を受けることは非常にまれですし、そういう話題になることも少ないのが実情です。ただ、競合の動きを気にされている方には、出願を調査して、現在の状況をアドバイスしています。商標の出願前の調査(競合調査)でも、登録済みの商標だけでなく、出願中の商標まで確認します。先に出願された商標は、まだ審査中でも、後から出す自社の出願の妨げになるからです。「出願中の商標は見えない」と思われがちな部分まで見落とさずに調べることも、弁理士の仕事の一つです。
競合の出願が見えるようになるまでの時間は、権利の種類によって大きく違います。

タイムリーに競合の動きを知りたいなら、使えるのは商標です。特許は出願から1年半経たないと公開されないので、タイムリーな情報としてはあまり使えません。ただ、出願と同時に審査請求をして、さらに早期審査を請求すると、3か月程度で審査されることがあります。早ければ半年以内に特許が成立するので、そうした特許は早く見えてきます。意匠は登録されるまで公開されないので、出願の段階で競合の動きを知ることはできません。なお、商標も、出願から公開までの1か月程度は見ることができません。出願前に調べた時点では見えなかった競合の出願が、あとから出てくることもあるので、自社の出願の直前にもう一度確認しておくと安心です。
それでも、競合の出願や登録の情報を何も見ないのと、見るのとでは大きな差があります。知的財産を取るにはお金がかかります。本気でなければ、お金を払ってまで権利を取ろうとはしません。だからこそ、出願の中身に競合の力の入れどころが表れます。

これらを合わせると、単に広く押さえようとしているのか、ピンポイントで狙ってきているのかが、出願の内容から見えてくる場合があります。逆に、指定商品や区分が広く出されていると、どんな商品なのか想像がつきにくくなります。
意匠では、関連意匠で出しているか、部分意匠で出しているかで、デザインのどこに注力しているのかが見えてくる場合があります。特許は明細書に具体的に書かれていることが多いので、明細書をしっかり読み込めば、どういう発明で、どこが重要なのかがある程度分かります。
競合の出願をウォッチングしているからこそ、打てる手があります。たとえば商標なら、自社にとって問題のある出願に気づいたときに、情報提供や異議申立てで、登録を阻止する方向に持っていくことができます。気づいていなければ、この選択肢自体がありません。情報提供は、審査中の出願に対して、審査官に情報を伝える手続きです。異議申立ては、登録になったあとに、商標掲載公報の発行から2か月以内に、登録を取り消すよう求める手続きです。異議申立てには期限があるので、早く気づくことが大切です。
見ているのはこちらだけではありません。自社の出願も、競合は見ています。商標に限らず、ほかの知的財産でも同じです。これは意外と意識されていない点で、だからこそ出願のタイミングが大事になります。

ただし、商標は先に出願した人が優先されます(先願主義)。出願を遅らせるほど、ほかの人に先に出願されるおそれも高くなるので、事業の状況に合わせて、弁理士と一緒にタイミングを決めることをお勧めします。先に他人に名前を商標登録されてしまうリスクは、「他人の名称を勝手に商標登録できる?先に取られる怖さ」で解説しています。新商品の名前の付け方は、「商品名の商標登録で失敗しない名前の付け方とブランドの守り方」をご覧ください。
競合の出願を、自分で毎月確認し続けるのは簡単ではありません。当事務所の「権利の健診」では、競合がどんな出願をしたのか、どの出願が登録になったのかを弁理士が確認し、毎月のレポートでお届けします。一番のポイントは、意識しなくても競合の情報が手に入ることです。
商標なら出願から1か月程度、意匠は登録後に分かります。特許も、早期審査などで早く成立したものは、ウォッチングで把握できます。見張る競合の数は、プランに応じて1社から10社まで選べます。競合がどんな知的財産を取ろうとしているのかを知る手がかりとして、ぜひ活用してください。
権利の健診はコチラ↓

Q. 競合が商標を出願したら、いつ分かりますか。
A. 出願から1か月程度で公開され、誰でも見られるようになります。
Q. 競合の特許出願も、すぐに分かりますか。
A. 原則として出願から1年半は公開されません。ただし、早期審査などで早く登録された特許は、登録の時点で分かります。
Q. 競合の商標出願から、何が分かりますか。
A. どんな名前で、どの分野の商品・サービスに出てこようとしているかです。指定商品の書き方や、ロゴか標準文字かを見ると、広く押さえたいのか、ピンポイントで狙っているのかも見えてきます。
Q. 新商品の商標は、いつ出願すればいいですか。
A. 早く出すのが王道ですが、競合に見られることも考えると、ローンチ直前の出願が一番よいと考えています。特許や意匠は、公表より前に一刻も早く出願してください。
Q. 競合の出願が自社の商標と似ていたら、どうすればいいですか。
A. 情報提供や異議申立てで、登録を阻止する方向に持っていける場合があります。気づいた時点で弁理士に相談してください。
Q. 競合の商標出願は、自分でも調べられますか。
A. 特許庁の無料データベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」で、競合の社名(出願人)などから調べられます。ただ、競合の動きを継続して見続けるのは手間がかかります。
Q. 自社の商標を出願すると、内容は公開されますか。
A. はい、公開されます。商標は出願から1か月程度で、誰でも見られるようになります。そのため、新商品の商標は、ローンチの時期を踏まえて出願のタイミングを考えます。
Q. 競合がまだ出願中の商標も、調べられますか。
A. 調べられます。商標は出願から1か月程度で公開されるので、審査中の商標も、J-PlatPatで確認できます。ただし、公開前の出願は見えないため、自社の出願の直前にもう一度確認しておくと安心です。
記事の執筆者

西山 玄一郎
にしやま げんいちろう
どんぐり特許商標事務所/代表弁理士
弁理士登録番号 第22420号
大手製薬会社で創薬研究、知的財産部で特許・意匠の出願・調査・訴訟に従事し、米国の特許事務所・法律事務所へ留学。ITベンチャーの起業・事業売却、AI創薬ベンチャーのサポートを経て、2021年にどんぐり特許商標事務所を開業。「権利をとる側」と「事業をつくる側」の両方の視点から、個人事業主・小規模事業者の知的財産をサポートしています。

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