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知的財産コラム

2026/10/25

商標登録で失敗しない名前の付け方とブランドの守り方

商品名の商標登録で失敗しない名前の付け方とブランドの守り方

飲食店や小売の商品は、特許や意匠登録で守るのはハードルが高いことが多く、最終的には商標によるブランディングで差別化していくケースが多いです。ただし、「ナポリタンパン」のように商品の特徴をそのまま表す名前は、商標登録できないか、登録できても弱い権利にしかなりません。名前を守りたいなら、最初からオリジナリティの高い名前を付けることが大切です。

「商品を権利で守りたい」という相談の実情

私のところにご相談いただく方は、いろいろなフェーズの方がいらっしゃいます。「特許を取りたい」「意匠を取りたい」「商標を取りたい」と明確に決めている方もいます。商標については「商標を取りたい」とはっきりおっしゃる方が多いですね。一方で、「自分の商品やビジネスを、何か権利で守りたい」というご相談も多くいただきます。そのときは、どういった守り方ができるのかをアドバイスしています。

その中で割と多いのが、すでに世の中にあるものを少し変えただけの商品を、なんとか守りたいというご相談です。「特許は取れませんか」「意匠登録は取れませんか」と聞かれるのですが、特許はハードルが高いケースが多いですし、意匠登録も微妙なラインのものがすごく多いです。取れるか取れないか悩むケースは本当に多く、正直、出願してみないと分からないこともあります。そういうときは、正直にそのようにお話ししています。

飲食店・小売で特許や意匠のハードルが高い理由

飲食店や小売の方からのご相談では、「特許」はあまり話題になりません。商品を扱っていれば意匠を検討し、最終的には商標でブランディングをして、ビジネスや商品を差別化していくところに落ち着くケースが多いように思います。

もちろん業態にもよります。たとえば焼き菓子などをテイクアウトで販売されている方なら、場合によっては意匠登録も可能です。製法にオリジナリティがあれば、特許を取る方法もなくはありません。ただ、私の経験上、飲食店の製法で特許を取ったことはなく、ハードルはかなり高いという温度感です。

一番の理由は、すでに世の中にいろいろなものが存在していることです。特許庁の審査では、日本のものだけでなく世界中のもの(特許法29条1項)を調べ、それと比較されます。そのため、特許や意匠には一定のハードルがあります。

飲食店・小売の新商品を守る特許・意匠・商標の3つの権利と、取りやすさの違いを示した図

商品を守れる可能性を見つける鍵は「こだわり」

商品を守れる可能性があるのは、自分でデザインを考えた、といったこだわりがある場合です。ご依頼者さんがどれだけこだわりを持っているか、その話を聞ければ、「そこにフォーカスを当てて守りましょう」という話ができます。

ですから、相談していただくときは、単に「この商品を守りたい」ではなく、「ここにこだわりました」というところを、ぜひ教えてほしいといつも思っています。

特徴をそのまま表す名前が抱える問題(商標登録できない商品名とは)

「ナポリタンパン」のように、商品の特徴をそのまま表す名前は、商標登録できません(商標法3条1項3号)。ただ、実はこういった名前でのご依頼は多いです。

特徴をそのまま表す名前でも、登録できる場合はあります。一つは、その名前を使い続けて、多くの人に「あのお店の商品だ」と知られるようになった場合(商標法3条2項)ですが、これはかなりレアケースです。通るとしたら、ほかの言葉や図形と組み合わせた場合です。

また、審査官によって審査の温度感がかなり違います。これがいいのか悪いのか分かりませんが、実際に同じような商標を2件出願して、片方は通って片方は通らなかったケースもあります。審査でたまたま通ってしまうことも、実務的には結構あります。結局、出してみないと分からないというのが正直なところです。

ただ、通ったとしても、権利はかなり弱いものになります。ほかの人が同じような名前を使っていても、排除できない可能性があります。さらに、異議申立てや無効審判で、権利を潰されてしまうリスクも出てきます。(どちらも、登録された商標について、ほかの人が「この登録はおかしい」と特許庁に申し立てる手続きです。)それなら、最初からオリジナリティの高い名前で出す方がいいと考えています。

オリジナリティのある名前の付け方(商品名のネーミングと商標の調べ方)

名前の付け方に、決まったルールがあるわけではありません。響きや覚えてもらいやすさに加えて、特徴をそのまま表すのではなく、なんとなくイメージができる程度に言葉に含ませておく、といった付け方がいいと思います。

当然、名前を決めるには、ほかの人が同じようなネーミングで商標登録していないかを調べる必要があります。自分で調べることもできますが、弁理士に相談していただくのがいいと思います。私のところにも、ネーミングの段階からご相談をいただいています。複数の案を出していただき、そこから私がアドバイスすることもあります。弁理士と一緒にネーミングを考えていくのは、ブランディングの観点でも非常に有効な手段です。自分で調べる場合は、特許庁の無料データベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」で、同じ名前や似た名前が登録されていないかを確認できます。

ブランドで差別化する(商標登録はブランディングの土台)

ここまで名前の付け方をお話ししてきましたが、誤解しないでいただきたいのは、良い名前を付けて商標登録をすれば、それだけで商品が守られたり、売れたりするわけではない、ということです。商標登録で守れるのは、あくまで「名前」です。名前は、お客さんに商品を覚えてもらい、ほかと区別してもらうための入り口です。

商品そのものは、ありふれていることが多いと思います。そのときに差別化するポイントは、やはりブランドです。高級感を出すにも、名前だけでなく、その世界観をしっかり構築してブランディングしていく必要があります。

そのブランディングのツールの一つとして、商標登録があります。特に高級路線を目指す方は、製品を世の中に提供するまで、そして提供してからのストーリーをしっかり持ち、それをお客さんにアピールすることです。そのうえで、ベースは商標登録で守っておく。これが非常に重要だと感じていますし、私のお客さんにも、そのようにされている方は一定数いらっしゃいます。

商品が選ばれる理由をつくる

では、お客さんは何を見て商品を選ぶのでしょうか。名前は選ばれるきっかけにはなりますが、選ばれ続ける理由になるのは、その名前の奥にある商品へのこだわりやストーリー、世界観です。

新商品を作った飲食店や事業者の方は、ぜひ自分の商品やサービスを「選んでもらう」ことを意識してください。数あるものから選ばれるには、理由が必要です。なぜ選ばれたのかを考えながら、その理由の道筋を立ててあげる。そこには差別化のためのブランディングや世界観があり、その世界観を守るためのツールの一つとして商標登録がある、ということをぜひ知っていただきたいと思います。名前は、その世界観の看板です。だからこそ、最初からオリジナリティのある名前を付けて、商標登録で守っておくことが大切なのです。

よくある質問(FAQ)

Q. 飲食店のメニューで特許は取れますか?

A. 製法にオリジナリティがあれば可能性はなくはありませんが、ハードルはかなり高いです。特許庁の審査では世界中の既存のものと比較されるためです。

Q. 商品の特徴をそのまま表す名前は、商標登録できませんか?

A. 原則として登録できません。ほかの言葉や図形と組み合わせると通る場合もありますが、通っても権利は弱く、ほかの人の使用を排除できなかったり、異議申立てや無効審判で潰されたりするリスクがあります。

Q. 商品名を決めるとき、商標はいつ調べればいいですか?

A. ネーミングのときに一緒に調べてください。自分で調べることもできますが、ネーミングの段階から弁理士に相談すると、ブランディングの観点からもアドバイスを受けられます。

Q. 商標登録をすればブランドは守れますか?

A. 商標登録は、ブランディングのツールの一つです。世界観やストーリーを作ってお客さんにアピールし、そのベースを商標登録で守っておくことが大切です。

Q. 「ナポリタンパン」のような名前でも、使い続ければ商標登録できますか?

A. 使い続けて、多くの人に「あのお店の商品だ」と知られるようになれば、登録できる場合があります(商標法3条2項)。ただ、かなりレアケースです。名前を守りたいなら、最初からオリジナリティのある名前を付ける方が確実です。

Q. 商品の形は、どうすれば守れますか?

A. これまでにない形であれば、意匠登録で守れる可能性があります。テイクアウトの焼き菓子などが例です。ただし、似た形がすでに世の中にあると登録は難しく、出してみないと分からないこともあります。

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記事の執筆者

西山 玄一郎

にしやま げんいちろう

どんぐり特許商標事務所/代表弁理士

弁理士登録番号 第22420号

大手製薬会社で創薬研究、知的財産部で特許・意匠の出願・調査・訴訟に従事し、米国の特許事務所・法律事務所へ留学。ITベンチャーの起業・事業売却、AI創薬ベンチャーのサポートを経て、2021年にどんぐり特許商標事務所を開業。「権利をとる側」と「事業をつくる側」の両方の視点から、個人事業主・小規模事業者の知的財産をサポートしています。

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