商標登録・意匠登録・特許出願をオンラインで相談できるどんぐり特許商標事務所

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知的財産コラム

2026/11/2

商標登録をする意味とは?|知らないうちに他社の商標登録を止めている仕組み

登録した商標は、何も起きていないように見えても、知らないうちに他社の商標登録を止めています。ところが、そのことは権利者本人には知らされません。この記事では、商標が裏でしている「仕事」と、それに気づく方法をお話しします。

「取ったけど何も起きない」のが商標の普通(商標登録をする意味はあるのか)

商標を取る理由は、人によってさまざまです。

  • 安心して事業を続けたい

  • 自分だけのブランドを守り、育てていきたい

  • 名前に愛着があるので登録した

  • Amazonのブランド登録に必要なので、とりあえず取った

  • 似た名前の商品の商標登録を防ぎたい

どの方にも共通しているのは、「取ったあと特に何も起きていないのが当然」という感覚ではないでしょうか。私自身もいくつか商標を持っていますが、だからといって日々何かが起きるわけではありません。

商標権のありがたみが分かるのは、争いになったときです。とはいえ、争いが起きてほしいと思う権利者はまずいません。何もないのが一番いい状態です。ただ、何もないからこそ、「取った意味はあったのだろうか」という疑問も湧いてきます。商標登録の価値の考え方は、「商標登録の価値はいくら?評価額を決めるのは権利ではなく事業」で解説しています。

お金の面でも、商標は「取ったらそれっきり」になりやすい権利です。登録料は10年が1単位で、5年ずつ分けて払う方も多いので、その間は追加の費用がかかりません。特許や意匠は毎年、維持費がかかるので、「お金をかけている」という実感があります。商標は費用がかかるのが最初だけに感じられます。これは商標のよいところでもあります。

登録商標が他社の商標登録を止める仕組み(引用商標とは)

商標の審査では、先に出願された他人の商標と似ていて、使う商品やサービスも似ている後の出願は、登録を認めないことになっています(商標法4条1項11号)。つまり、皆さんの登録商標は、似た名前で後から出願してきた他社の商標登録を、審査の段階で止めています。審査で、止める理由として挙げられた先の商標のことを「引用商標」といい、挙げられることを「引用される」といいます。

当事務所で特許庁の公開データを集計したところ、商標の拒絶理由通知のうち約3割(直近12か月で15,071通、32.9%)が、先の商標を理由とするものでした。私の感覚とも一致する数字です。当事務所が代理している出願に限れば、出願前にしっかり調査をしているので、割合はもっと低くなります。それでも、調査をしても避けきれずに先の商標を理由とする拒絶理由が来ることはあります。

さらに、他社の審査で引用されている先の商標は、年に延べ約5万件と推計されます。商標の出願は年に約17万件(2025年)です。その審査の陰で、これだけの数の商標がきちんと仕事をしています。先に他人に名前を商標登録されてしまうリスクは、「他人の名称を勝手に商標登録できる?先に取られる怖さ」で解説しています。

引用されても、本人には通知されない

ところが、自分の商標が他社の商標登録を止めていることを知っている権利者は、ほとんどいません。他社の審査で引用されても、権利者には何の連絡も来ないからです。知るには、自分から調べるしかありません。

本来、引用されたという情報には大きな意味があります。

自分の商標が他社の審査で引用されると分かる3つのこと

特に3つ目は、競合をウォッチングするうえで有力な手がかりです。それなのに、ほとんど活かされていないのが現状です。

引用のあとに起こり得ること(不使用取消審判など)

自分の商標に出願を止められた相手は、次の手を打ってくることがあります。

商標の出願を引用で止められた相手が取り得る次の手(不使用取消審判の請求、譲渡の打診)と、引用を知っていれば不意打ちを防げることを示した図)

どちらも、何も知らずに受けるのと、予想して受けるのとでは、取れる選択肢が大きく変わります。不使用取消審判は、登録した商品・サービスに、日本国内で3年以上続けて使っていない商標を、取り消すよう求める手続きです。

引用に気づいたときの対応

自分の商標が引用されていると分かったら、次のことを進めてください。

  1. 出願してきた相手が誰で、どんな商品に使おうとしているかを調べる

  2. 自分の商標を、登録した商品・サービスにきちんと使っているか確認する

  3. 使っている証拠を残しておく

  4. 相手がどこで、どんな行動を起こしてくる可能性があるかを、弁理士と一緒に見ていく

自分で調べるのが難しい理由

では、自分の商標が引用されていないかを自分で調べられるかというと、手作業ではほぼ無理です。似た商標を検索し、自分の商標の類似群コードと重なるものがないかを確かめ、そのうえで審査の経過を1件ずつ見ていく必要があります。調査ツールやサービスを使わない限り、気づくのは難しいでしょう。「似ている」かどうかの判断の考え方は、「【ブランドを守る】商標登録は「ブランド名そのまま」で十分?」で解説しています。

登録した権利を見続けるサービス「権利の健診」(商標のウォッチング)

弁理士の仕事は、権利を取ることが中心です。けれども私は、権利を取ることよりも、取った権利をビジネスにどう生かすかの方が大事だと考えています。取って終わりでは、ものすごくもったいない。

知的財産を事業戦略のツールとして生かすには、競合をウォッチングし、ビジネスを脅かす動きを早く察知することが欠かせません。ところが、こうしたサービスは世の中にあまりありません。そこで当事務所では、2026年11月から「権利の健診」を始めました。

商標・意匠で似た出願や登録が出ていないか似た出願が出ていないか、競合が新しく出願していないかを弁理士が確認し、見解を添えて毎月レポートでお届けします。権利の無料診断も用意しています。

知財を積極的に活用してビジネスを守りたい方、成長に生かしたい方、競合の動きをしっかり見ておきたい方に、ぜひ使っていただきたいサービスです。

よくある質問(FAQ)

Q. 商標を登録しても何も起きていません。意味はあったのでしょうか。

A. 意味はあります。何も起きていないように見えても、似た名前の他社の商標登録を審査で止めていることがあります。何もないのは、権利がうまく働いている状態とも言えます。

Q. 自分の商標が他社の審査で引用されたら、通知は来ますか。

A. 来ません。引用されたことを知るには、自分から調べる必要があります。

Q. 引用されたと分かったら、まず何をすればいいですか。

A. 相手の情報を調べること、そして登録した商品・サービスに自分の商標をきちんと使っているかを確認し、使っている証拠を残すことです。相手から不使用取消審判を請求される可能性に備えられます。

Q. 引用されているかどうか、自分で調べられますか。

A. 手作業ではほぼ無理です。似た商標を探して審査経過を1件ずつ確認する必要があり、調査ツールやサービスを使わない限り難しいのが実情です。当事務所の「権利の健診」では、引用されていないかを弁理士が確認します。権利を無料で診断できます。

Q. 商標は、特許のように毎年の維持費がかかりますか。

A. かかりません。登録料は10年単位で、5年ずつ分けて払うこともできます。

Q. 商標を取っただけで、使っていないとどうなりますか。

A. 登録した商品・サービスに、日本国内で3年以上続けて使っていないと、不使用取消審判(商標法50条)を請求され、登録を取り消されるおそれがあります。使っている証拠(商品の写真、請求書、ウェブページなど)を、日付が分かる形で残しておくと安心です。

Q. 商標のウォッチングとは何ですか。

A. 登録した商標のまわりの動きを、継続して確認することです。他社の審査で引用されていないか、似た名前の出願が出ていないか、競合が新しく出願していないかを確認します。当事務所の「権利の健診」では、弁理士が毎月確認し、見解を添えてレポートでお届けします。権利を無料で診断できます。

記事の執筆者

西山 玄一郎

にしやま げんいちろう

どんぐり特許商標事務所/代表弁理士

弁理士登録番号 第22420号

大手製薬会社で創薬研究、知的財産部で特許・意匠の出願・調査・訴訟に従事し、米国の特許事務所・法律事務所へ留学。ITベンチャーの起業・事業売却、AI創薬ベンチャーのサポートを経て、2021年にどんぐり特許商標事務所を開業。「権利をとる側」と「事業をつくる側」の両方の視点から、個人事業主・小規模事業者の知的財産をサポートしています。

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